製造業が活用できる補助金7選

公開日 2023/02/20更新日 2023/03/09

著者 佐藤淳 / 公認会計士

※記事内容は記事更新日時点の情報になります。最新の情報は必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

2020年に発生した新型コロナウイルスは世界的パンデミックとなり、製造業も大きな打撃を受けました。

また現在は物価高の影響で、特に中小規模の製造業は引き続き厳しい事業環境にあります。

この記事では、製造業が活用できる補助金について、国や各自治体における7つの支援策を取り上げて詳しく解説します。

製造業が活用できる補助金(国による支援)

まずは製造業が活用できる補助金のうち、国が実施しているものを解説します。

事業再構築補助金 

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金制度です。

製造業の場合、本制度を活用して、スイーツの製造販売を行っていた会社がレトルト食品OEM事業を開始するなど新分野展開を行った事例があります。
参照:事業再構築補助金 採択事例紹介

本事業は6つの申請類型で構成されています。各類型の概要、補助金額、補助率は、以下のとおりです

①通常枠

概要 新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す中小企業等の新たな挑戦を支援。
補助金額 【従業員数 20人以下】 100万円~2,000万円
【従業員数 21~50人】 100万円~4,000万円
【従業員数 51~100人】 100万円~6,000万円
【従業員数 101 人以上】 100万円~8,000万円
補助率 中小企業者等 2/3(6,000万円を超える部分は 1/2(※))
中堅企業等 1/2(4,000万円超を超える部分は 1/3(※))
(※)補助金額によって補助率が異なりますのでご注意ください。

②大規模賃金引上枠

概要 多くの従業員を雇用しながら、継続的な賃金引上げに取り組むとともに、従業員を増やして生産性を向上させる中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 101人以上】8,000万円超~1億円
補助率 中小企業者等 2/3(6,000万円を超える部分は 1/2)
中堅企業等 1/2(4,000万円を超える部分は 1/3)

③回復・再生応援枠

概要 新型コロナウイルスの影響を受け、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 5人以下】 100万円~500万円
【従業員数 6~20人】 100万円~1,000万円
【従業員数 21人以上】 100万円~1,500万円
補助率 中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3

④最低賃金枠

概要 最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 5人以下】 100万円~500万円
【従業員数 6~20人】 100万円~1,000万円
【従業員数 21人以上】 100万円~1,500万円
補助率 中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3

⑤グリーン成長枠

概要 研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 中小企業等 100万円~1億円
中堅企業等 100万円~1.5億円
補助率 中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3

⑥原油価格・物価高騰等緊急対策枠(緊急対策枠)

概要 原油価格・物価高騰等の、予期せぬ経済環境の変化の影響を受けている中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 5人以下】 100万円~1,000万円
【従業員数 6~20人】 100万円~2,000万円
【従業員数 21~50人】 100万円~3,000万円
【従業員 51人~】 100万円~4,000万円
補助率 中小企業者等 3/4(※1)
中堅企業等 2/3(※2)
(※1)従業員数 5人以下の場合 500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合 1,500万円を超える部分は2/3)
(※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合 1,500万円を超える部分は1/2)

参照:事業再構築補助金公式HP

ものづくり補助金 

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者等が今後、複数年にわたって相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入)などに対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援するものです。

製造業においてはこれまで、食品製造機械の導入による生産性向上や労働環境改善の事例等があります。
参照:ものづくり補助金 成果事例のご紹介

本事業は、5つの申請類型で構成されています。各類型の概要、補助率、補助金額は、以下のとおりです。

①通常枠

概要 革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額 従業員数5人以下 :100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円
補助率

1/2、小規模企業者・小規模事業者2/3

②回復型賃上げ・雇用拡大枠

概要 業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者(※)が行う、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
※応募締切時点の前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下であり、常時使用する従業員がいる事業者に限る。
補助金額 従業員数5人以下:100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円
補助率

2/3

③デジタル枠

概要 DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発又はデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額 従業員数 5人以下 :100万円~750万円
6人~10人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円
補助率

2/3

④グリーン枠

概要 温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援 
補助金額 (エントリー類型)
従業員数5人以下:100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上: 100万円~1,250万円
(スタンダード類型)
従業員数 5人以下:750万円~1,000万円
6人~20人:1,000万円~1,500万円
21人以上:1,250万円~2,000万円
(アドバンス類型)
従業員数5人以下:1,000万円~2,000万円
6人~20人:1,500万円~3,000万円
21人以上:2,000万円~4,000万円
補助率

2/3

⑤グローバル市場開拓枠

概要 海外事業の拡大・強化等を目的とした「製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援(①海外直接投資類型、②海外市場開拓(JAPAN ブランド)類型、③インバウンド市場開拓類型、④海外事業者との共同事業類型のいずれかに合致するもの)
補助金額 100万円~3,000万円
補助率

1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3

参照:ものづくり補助金 公式HP

IT導入補助金 

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツール導入に活用できる補助金です。

製造業では、菓子製造の会社において本補助金を活用して自社ECサイトを立ち上げ、ECの月商が8倍に向上した事例があります。
参照:IT導入補助金2020 活用事例

本事業は4つの申請類型で構成されています。各類型の概要、補助上限額・下限額金額、補助率は以下のとおりです。

①通常枠(A・B類型)

概要 中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
補助上限額・下限額 A類型:30万円~150万円未満
B類型:150万円~450万円以下
補助率

1/2以内

②-1. デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

概要 中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
補助上限額・下限額

5万円※~350万円
※第19次締切回(最終回)に限り「下限額なし」とする。

補助率

3/4以内または2/3以内

②-2. デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)ハードウェア購入費用

PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器
補助上限額 10万円
補助率

1/2以内

レジ・券売機等
補助上限額

20万円

補助率

1/2以内

③セキュリティ対策推進枠

概要

中小企業・小規模事業者等がサイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約や価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや生産性向上を阻害するリスクを低減していただく事を目的としています。

補助上限額・下限額 5万~100万円
補助率

1/2以内

このほか、「デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)」がありますが、複数社連携しての申請が必須となるため、本記事では説明を割愛します。

参照:IT導入補助金2022 公式HP

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組みや、業務効率化の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。

機械装置費用などのほか、ウェブサイト関連費用や展示会の出店費、店舗改装などの外注費など、販路開拓に関するさまざまな費用が対象となります。

これまでには、冷凍設備投資及び販路開拓といった採択事例があります。参照:商工会議所地区 令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型> 第10回締切分採択者一覧

本事業を構成する5つの申請類型の補助上限や補助率は、次のとおりです。

なお、インボイス特例対象事業者には、記載した金額に 50 万円の上乗せが行われます。

①通常枠

補助上限 50万円
補助率

2/3

②賃金引上げ枠

概要 最低賃金の引き上げが行われた中、それに加えて更なる賃上げを行い、従業員に成長の果実を分配する意欲的な小規模事業者に対し政策支援をするため、補助事業実施期間に事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とした事業者に対し
て、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3(赤字事業者については3/4)

③卒業枠

概要 更なる事業規模拡大に意欲的な小規模事業者に対し政策支援をするため、補助事業実施期間中に常時使用する従業員を増やし、小規模事業者として定義する従業員の枠を超え事業規模を拡大する事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3

④後継者支援枠

概要 将来的に事業承継を行う予定があり、新たな取組を行う後継者候補として、「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者を対象に政策支援をするため、要件を満たす事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3

⑤創業枠

概要 創業した事業者を重点的に政策支援するため、産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を公募締切時から起算して過去3か年の間に受け、かつ、過去3か年の間に開業した事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3

参照:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金 公式HP

製造業が活用できる補助金(自治体による支援)

次に、各自治体による支援策を3件取り上げて解説します。

青森県:令和4年度青森県冷凍食品加工機械設備導入支援事業

県農林水産物を県内で冷凍加工する冷凍食品の開発・販売に取り組むために必要な機械設備のリース導入を支援するものです。

補助率・補助上限額

1/2以内・500万円

東京都:製造現場における原油価格高騰等緊急対策事業

原油や原材料価格の高騰等が長期化する状況などを踏まえ中小製造事業者の光熱水費等の削減の取り組みを支援します。

支援内容

1.専門家派遣

原油価格の高騰等により経営に影響を受けている事業者の申込に応じて専門家が製造現場を訪問し、現地調査や助言等を実施。

・1社あたり最大2回、無料

2.助成金支援

専門家派遣を受けた事業者を対象に、固定費削減に資する設備等の導入経費を助成。

4/5以内、300万円

鳥取県:食の安全・安心プロジェクト推進事業補助金

輸出向け国際認証取得など食の安全・安心への対応による差別化を通じて、国外への取引先・販路拡大を目指す本県食料品製造業者の取組を支援するものです。

支援内容

1.認証取得支援事業

(1)衛生管理向上事業
 ・衛生管理手法の検討や手順書類の作成
 ・衛生管理手法決定に必要な検査や原材料調達元等の監査等を行う事業

(2)人材育成事業
  衛生管理体制を構築するために必要な研修を実施する事業

(3)認証取得事業
  高度な衛生管理体制を構築し、ISO22000やHACCP、GMPなどの国際認証を取得する事業

2/3以内、1件あたり総額350万円(24か月以内)

2.安定化支援事業

輸出向け認証の初回更新を図る事業

1/2以内、1件あたり総額225万円(ただし、上限75万円/年度)(36か月以内)

まとめ

製造業が活用できる補助金や助成金について、国による支援策と各自治体による主な支援策を解説しました。

自社で活用可能な支援策がありましたら、是非積極的に活用し、事業継続・拡大にお役立てください。

中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事

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