パソコン購入につかえる「IT導入補助金」とは?そのほか活用可能な助成金も紹介

公開日 2023/03/10更新日 2023/03/15

著者 佐藤淳 / 公認会計士

※記事内容は記事更新日時点の情報になります。最新の情報は必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

全国の中小企業・小規模事業者等が行う生産性向上を支援する制度に、「IT導入補助金」があります。

本制度は、パソコン(PC)購入の際にも活用できます。(申請枠・要件による)

そこでこの記事では、パソコン購入に活用できるIT導入補助金を中心に解説するほか、地方自治体が運営する助成金について紹介します。

IT補助金とは

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する際に活用できる補助金です。

大きく3つの申請類型に分かれ、ソフトウェア購入費やクラウド利用料、ハードウェア購入費等が補助対象となります。

また、2023年3月10日に2023年の公募要領が公開され、申請受付は3月下旬開始予定です。

通常枠(A・B類型) 

通常枠は、製品・サービスの生産・提供など、生産活動に資する事業を行っている中小企業・小規模事業者等が、自社の強み・弱みを認識、分析し、生産性向上のためプロセスの改善と効率化に資する方策として、あらかじめ事務局に登録されたITツールを導入する補助事業者に対し、当該ITツールの導入費用の一部を補助するものです。

申請には、「交付申請の直近月において、申請者が営む事業場内の最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること。」「独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」又は「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行うこと。」などの要件を満たすことが必要です。

対象経費 

通常枠における対象経費は、次のとおりです。

  • ソフトウェア購入費
  • クラウド利用料(最大2年分)
  • 導入関連費

従来、クラウド利用料は1年分とされていましたが、2023年実施分から最大2年分に拡充されました。

補助金額・補助率

通常枠A類型

  • 補助金額:5万円~150万円
  • 補助率:1/2

通常枠B類型

  • 補助金額:150万円450万円
  • 補助率:1/2

2023年実施分から、A類型の下限額が30万円から5万円に引き下げられ、対象経費の額が拡充されました。

セキュリティ対策推進枠 

セキュリティ対策推進枠は、サイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー
攻撃被害が供給制約・価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや中小企業・小規模事業者等の生産性向上を阻害するリスクを低減することを目的として設けられました。

補助対象となるセキュリティサービスは、独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービスであることが要件となります。

対象経費 

サイバーセキュリティサービス利用料(最大2年分)

補助金額・補助率

  • 補助金額:5万円~100万円
  • 補助率:1/2

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) 

デジタル基盤導入枠は、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・EC ソフト、PC・タブレット、レジ・券売機等を導入し、中小企業・小規模事業者等が労働生産性を向上させるとともに、インボイス制度も見据えたデジタル化を進めるためのITツールの導入費用の一部を補助するものです。

「デジタル化基盤導入類型」「複数社連携IT導入類型」に分かれ、「デジタル化基盤導入類型」はPCやタブレット端末の購入も対象となります。

対象経費 

対象経費は以下のとおりです。

  • ソフトウェア購入費
  • クラウド利用料(最大2年分)
  • 導入関連費
  • ハードウェア購入費
    PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機、レジ・券売機等

補助金額・補助率

補助金額:~350万円

補助率:
・50万円以下の部分:3/4
・50万円超~350万円の部分:2/3

2023年実施分から、補助金額の下限額は撤廃されました。

なお、次の設備を補助対象とする場合の補助率は1/2となり、補助上限額はそれぞれ次のとおりです。

  • PC、タブレット等:10万円
  • レジ、券売機等:20万円

デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型) 

複数社連携IT導入類型は、デジタル化基盤導入枠のうち、複数社が連携してITツールを導入する際に活用できる申請枠です。

対象経費 

対象となる経費は、以下のとおり分類されます。

  1. 基盤導入経費
  2. 消費動向等分析経費
  3. 補助事業者が参画事業者をとりまとめるために要する事務費、外部専門家謝金・旅費

補助金額・補助率

基盤導入経費

  • 補助金額:~350万円
  • 補助率:5万円~50万円以下の部分:3/4、50万円超~350万円の部分:2/3

消費動向等分析経費

  • 補助額:50万円×グループ構成員数
  • 補助率:2/3

なお、基盤導入経費と消費動向等分析経費を合わせた上限は3,000万円となります。

補助事業者が参画事業者をとりまとめるために要する事務費、外部専門家謝金・旅費

  • 補助上限額:200万円
  • 補助率:上記(1+2)×10%

パソコン購入に活用可能な助成金 

IT導入補助金の他にも、中小企業・小規模事業者等がPC等を購入する際に活用できる制度があります。

各自治体が設けている助成金制度を2例挙げて紹介します。

兵庫県:テレワーク導入支援助成金 

多様で柔軟な働き方を推進するため、テレワーク環境を整備する事業主に助成金を支給します。

対象事業主

  1. テレワーク環境を整備する事業主
  2. 企業の常時雇用労働者が300人以下の事業主

対象経費

  1. テレワークのために使用するパソコン、タブレット、ソフトウェア、周辺機器の購入費用、ネットワーク設定等の初期費用
  2. コワーキングスペース等の借上料

補助金額・補助率

対象経費の2分の1(1企業あたり1年度中に仕事と生活の調和環境整備助成金との合計2回、かつ200万円を上限とする)

参照:テレワーク導入支援助成金

愛知県豊田市:豊田市テレワーク導入支援補助金【単独補助コース】

豊田市内の事業所において、新たにテレワークを導入する経費に対し、補助金を交付します。

令和2年度に創設した、国の助成金等に上乗せする制度に加え、令和4年度は、新たに、市が単独で補助するコースを設定します。

補助対象者

市内に主たる事業所を有する中小企業者

補助対象経費

  1. 市内事業所におけるテレワークに使用する機器購入費(1点2万円(税抜き)以上のものに限る)
    例: WEB会議機器、社内のパソコンを遠隔操作するための機器、勤怠管理システムの導入、社外において従業員が使用するパソコン、タブレット、スマートフォン等の購入費
  2. 就業規則、労働協約、労使協定の作成、変更に係る経費(5万円(税抜き)を上限)
    (備考)ただし、本補助金の交付決定を受けた日以降に発生し、令和5年3月末日までに支払を完了したものに限る。

補助金額・補助率

上限50万円・2分の1

まとめ

今回は中小企業・小規模事業者等がパソコン購入の際に活用できる補助金制度を、解説、紹介しました。

IT環境を整備することで、事業運営を効率化することが可能となります。設備導入を考えている方はぜひ補助金活用をご検討ください。

中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事

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