飲食店が使えるおすすめ補助金・助成金7選

公開日 2023/02/08更新日 2023/03/09

著者 佐藤淳 / 公認会計士

多くの飲食店にとって、光熱費や原材料費の高騰、人手不足など、厳しい経営環境が続いています。

こうした状況下、飲食店が活用できる補助金と助成金を7件取り上げて解説します。

飲食店が使える補助(国による支援) 

補助金には、国(政府)が主管するものと、各自治体が主管するものに大別されます。まず、国による支援施策を紹介します。
(2023年2月時点の情報です。最新の情報は公式公募ページをご確認ください)

事業再構築補助金 

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金制度です。

本事業は6つの申請類型で構成されています。各類型の概要、補助金額、補助率は、以下のとおりです

①通常枠

概要 新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す中小企業等の新たな挑戦を支援。
補助金額 【従業員数 20人以下】 100万円~2,000万円
【従業員数 21~50人】 100万円~4,000万円
【従業員数 51~100人】 100万円~6,000万円
【従業員数 101 人以上】 100万円~8,000万円
補助率 中小企業者等 2/3(6,000万円を超える部分は 1/2(※))
中堅企業等 1/2(4,000万円超を超える部分は 1/3(※))
(※)補助金額によって補助率が異なりますのでご注意ください。

②大規模賃金引上枠

概要 多くの従業員を雇用しながら、継続的な賃金引上げに取り組むとともに、従業員を増やして生産性を向上させる中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 101人以上】8,000万円超~1億円
補助率 中小企業者等 2/3(6,000万円を超える部分は 1/2)
中堅企業等 1/2(4,000万円を超える部分は 1/3)

③回復・再生応援枠

概要 新型コロナウイルスの影響を受け、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 5人以下】 100万円~500万円
【従業員数 6~20人】 100万円~1,000万円
【従業員数 21人以上】 100万円~1,500万円
補助率 中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3

④最低賃金枠

概要 最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 5人以下】 100万円~500万円
【従業員数 6~20人】 100万円~1,000万円
【従業員数 21人以上】 100万円~1,500万円
補助率 中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3

⑤グリーン成長枠

概要 研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 中小企業等 100万円~1億円
中堅企業等 100万円~1.5億円
補助率 中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3

⑥原油価格・物価高騰等緊急対策枠(緊急対策枠)

概要 原油価格・物価高騰等の、予期せぬ経済環境の変化の影響を受けている中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 5人以下】 100万円~1,000万円
【従業員数 6~20人】 100万円~2,000万円
【従業員数 21~50人】 100万円~3,000万円
【従業員 51人~】 100万円~4,000万円
補助率 中小企業者等 3/4(※1)
中堅企業等 2/3(※2)
(※1)従業員数 5人以下の場合 500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合 1,500万円を超える部分は2/3)
(※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合 1,500万円を超える部分は1/2)

参照:事業再構築補助金公式HP

ものづくり補助金 

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者等が今後、複数年にわたって相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入)などに対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援するものです。

本事業は、5つの申請類型で構成されています。各類型の概要、補助率、補助金額は、以下のとおりです。

①通常枠

概要 革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額 従業員数5人以下 :100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円
補助率

1/2、小規模企業者・小規模事業者2/3

②回復型賃上げ・雇用拡大枠

概要 業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者(※)が行う、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
※応募締切時点の前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下であり、常時使用する従業員がいる事業者に限る。
補助金額 従業員数5人以下:100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円
補助率

2/3

③デジタル枠

概要 DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発又はデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額 従業員数 5人以下 :100万円~750万円
6人~10人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円
補助率

2/3

④グリーン枠

概要 温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援 
補助金額 (エントリー類型)
従業員数5人以下:100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上: 100万円~1,250万円
(スタンダード類型)
従業員数 5人以下:750万円~1,000万円
6人~20人:1,000万円~1,500万円
21人以上:1,250万円~2,000万円
(アドバンス類型)
従業員数5人以下:1,000万円~2,000万円
6人~20人:1,500万円~3,000万円
21人以上:2,000万円~4,000万円
補助率

2/3

⑤グローバル市場開拓枠

概要 海外事業の拡大・強化等を目的とした「製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援(①海外直接投資類型、②海外市場開拓(JAPAN ブランド)類型、③インバウンド市場開拓類型、④海外事業者との共同事業類型のいずれかに合致するもの)
補助金額 100万円~3,000万円
補助率

1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3

参照:ものづくり補助金 公式HP

IT導入補助金 

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツール導入に活用できる補助金です。

本事業は4つの申請類型で構成されています。各類型の概要、補助上限額・下限額金額、補助率は以下のとおりです。

①通常枠(A・B類型)

概要 中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
補助上限額・下限額 A類型:30万円~150万円未満
B類型:150万円~450万円以下
補助率

1/2以内

②-1. デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

概要 中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
補助上限額・下限額

5万円※~350万円
※第19次締切回(最終回)に限り「下限額なし」とする。

補助率

3/4以内または2/3以内

②-2. デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)ハードウェア購入費用

PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器
補助上限額 10万円
補助率

1/2以内

レジ・券売機等
補助上限額

20万円

補助率

1/2以内

③セキュリティ対策推進枠

概要

中小企業・小規模事業者等がサイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約や価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや生産性向上を阻害するリスクを低減していただく事を目的としています。

補助上限額・下限額 5万~100万円
補助率

1/2以内

このほか、「デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)」がありますが、複数社連携しての申請が必須となるため、本記事では説明を割愛します。

参照:IT導入補助金2022 公式HP

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組みや、業務効率化の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。

機械装置費用などのほか、ウェブサイト関連費用や展示会の出店費、店舗改装などの外注費など、販路開拓に関するさまざまな費用が対象となります。

本事業を構成する5つの申請類型の補助上限や補助率は、次のとおりです。

なお、インボイス特例対象事業者には、記載した金額に 50 万円の上乗せが行われます。

①通常枠

補助上限 50万円
補助率

2/3

②賃金引上げ枠

概要 最低賃金の引き上げが行われた中、それに加えて更なる賃上げを行い、従業員に成長の果実を分配する意欲的な小規模事業者に対し政策支援をするため、補助事業実施期間に事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とした事業者に対し
て、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3(赤字事業者については3/4)

③卒業枠

概要 更なる事業規模拡大に意欲的な小規模事業者に対し政策支援をするため、補助事業実施期間中に常時使用する従業員を増やし、小規模事業者として定義する従業員の枠を超え事業規模を拡大する事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3

④後継者支援枠

概要 将来的に事業承継を行う予定があり、新たな取組を行う後継者候補として、「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者を対象に政策支援をするため、要件を満たす事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3

⑤創業枠

概要 創業した事業者を重点的に政策支援するため、産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を公募締切時から起算して過去3か年の間に受け、かつ、過去3か年の間に開業した事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3

参照:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金 公式HP

飲食店が使える補助(自治体による支援) 

国による支援策に続き、各自治体が主管する支援策から3件取り上げて解説します。

東京都:インバウンド対応力強化支援補助金 

東京都及び(公財)東京観光財団では、東京都内の宿泊施設、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設等が、訪都外国人旅行者のニーズに対応した利便性や快適性を向上させる目的で新たに実施する受入対応強化の取組を支援しています。

補助対象者・補助上限額
宿泊施設、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設、観光バス事業者:1施設/店舗/営業所あたり上限300万円
※無線LAN設置の場合は、設置箇所数に15,000円を掛けた金額と補助対象経費の1/2の金額のいずれか低いほうの金額
※設置箇所数は対象施設ごとに上限あり

中小企業団体等、観光関連事業者グループ:1団体/グループあたり上限1,000万円
※対象事業によって、上限額が異なります。

補助率
補助対象経費の1/2以内
※「災害時における外国人旅行者の受入対応」事業は2/3以内

募集期間
令和4年4月1日(金)~令和5年3月31日(金)まで【当日消印有効】※補助金申請額が予算額に達した時点で受付を終了します。

参照:インバウンド対応力強化支援補助金 公募ページ

東京都:飲食事業者の業態転換支援事業

新型コロナウイルス感染症の影響により、大きく売上が落ち込んでいる都内中小飲食事業者が、新たなサービス(テイクアウト・宅配・移動販売)により、売上を確保する取組に対し、経費の一部を助成します。

助成上限額
100万円

助成率
助成対象経費の4/5以内(千円未満切り捨て)

募集期間
令和5年1月1日(日)~令和5年3月31日(金)

参照:飲食事業者の業態転換支援事業 公募ページ

山形県:新・生活様式対応支援補助金(新型コロナ対策認証対応型)

「山形県新型コロナ対策認証制度」の認証取得等、より適正な感染防止対策を講じるため、中小・小規模の飲食業者及び宿泊業者が行う設備投資等を支援します。

本補助金の申請が可能となるのは「山形県新型コロナ対策認証制度」の認証取得に向けた施設確認において県から助言を受けた事項を改善するために必要な設備投資等を行った事業者の方です。

補助対象者・補助額
飲食店(持ち帰り・配達飲食サービス業は対象外)
・常時使用する従業員の数が5名以下の場合 10万円以内
・常時使用する従業員の数が6名以上の場合 20万円以内

宿泊業
・常時使用する従業員の数が20名以下の場合 20万円以内
・常時使用する従業員の数が21名以上の場合 40万円以内

※令和3年度に本補助金を活用した場合には、上記補助額から令和3年度に交付された補助額を減じた額が令和4年度分の補助額となります。

募集期間
令和4年4月1日(金)~令和5年2月28日(火)

参照:山形県新・生活様式対応支援補助金(新型コロナ対策認証対応型)公募ページ

まとめ

飲食店が活用できる補助金と助成金について、国レベルのものと各自治体レベルのものをそれぞれ取り上げて解説しました。

これらの支援制度を活用し、今後の事業運営にお役立てください。

中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事

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