建設業におすすめの補助金5選と活用事例

公開日 2023/01/20更新日 2023/03/09

著者 細井 陽 / 公認会計士

新型コロナウイルスの感染拡大や物価高など、先行き不透明な社会・経済状況が続いています。

この記事では、こうした状況下で、建設業の皆様が活用可能な補助金のうち、特におすすめの補助金5つを選んで解説します。

事業再構築補助金 

事業再構築補助金は、中小企業等が行う新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編など思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的として政府(主管:経済産業省)が運営する補助金制度です。

事業概要

本事業は6つの申請類型で構成されています。各類型の概要、補助金額、補助率は、以下のとおりです。

①通常枠

概要 新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す中小企業等の新たな挑戦を支援。
補助金額 【従業員数 20人以下】 100万円~2,000万円
【従業員数 21~50人】 100万円~4,000万円
【従業員数 51~100人】 100万円~6,000万円
【従業員数 101 人以上】 100万円~8,000万円
補助率 中小企業者等 2/3((6,000万円を超える部分は 1/2(※))
中堅企業等 1/2(4,000万円超を超える部分は 1/3(※))
(※)補助金額によって補助率が異なりますのでご注意ください。

②大規模賃金引上枠

概要 多くの従業員を雇用しながら、継続的な賃金引上げに取り組むとともに、従業員を増やして生産性を向上させる中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 101人以上】8,000万円超~1億円
補助率 中小企業者等 2/3(6,000万円を超える部分は 1/2)
中堅企業等 1/2(4,000万円を超える部分は 1/3)

③回復・再生応援枠

概要 新型コロナウイルスの影響を受け、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 5人以下】 100万円~500万円
【従業員数 6~20 人】 100万円~1,000万円
【従業員数 21人以上】 100万円~1,500万円
補助率 中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3

④最低賃金枠

概要 最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 5人以下】 100万円~500万円
【従業員数 6~20人】 100万円~1,000万円
【従業員数 21人以上】 100万円~1,500万円
補助率 中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3

⑤グリーン成長枠

概要 研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 中小企業等 100万円~1億円
中堅企業等 100万円~1.5億円
補助率 中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3

⑥原油価格・物価高騰等緊急対策枠(緊急対策枠)

概要 原油価格・物価高騰等の、予期せぬ経済環境の変化の影響を受けている中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額 【従業員数 5人以下】 100万円~1,000万円
【従業員数 6~20人】 100万円~2,000万円
【従業員数 21~50人】 100万円~3,000万円
【従業員 51人~】 100万円~4,000万円
補助率 中小企業者等 3/4(※1)
中堅企業等 2/3(※2)
(※1)従業員数 5人以下の場合 500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合 1,500万円を超える部分は2/3)
(※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合 1,500万円を超える部分は1/2)

参照:事業再構築補助金公式HP

活用事例

建設業における事業再構築補助金の活用事例(第7回公募・採択分)のうち、東京と大阪からそれぞれ1件ずつ取りあげます。

なお、第7回公募(令和4年10月5日締切)では、15,132件の応募に対して7,745件が採択され、採択率は約51.18%となっています。

事例1

地域 東京都台東区
事業者名 株式会社キョウワ
事業計画名 「印刷関連サービス業」から常温商品用の「倉庫業」への業種転換
認定支援機関名 東京商工会議所

事例2

地域 大阪市福島区
事業者名 株式会社いちい工務店
事業計画名 工務店がDIYスペース運営の物品賃貸事業で売上の回復を図る
認定支援機関名 永和信用金庫

参照:事業再構築補助金(第7回公募採択結果)

ものづくり補助金 

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者等が今後、複数年にわたって相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入)などに対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援するものです。

事業概要 

ものづくり補助金は、5つの申請類型で構成されています。各類型の概要、補助率、補助金額は、以下のとおりです。

なお、各枠には基本要件に加えた追加要件がありますのでご注意ください。

①通常枠

概要 革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額 従業員数5人以下 :100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円
補助率

1/2、小規模企業者・小規模事業者2/3

②回復型賃上げ・雇用拡大枠

概要 業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者(※)が行う、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
※応募締切時点の前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下であり、常時使用する従業員がいる事業者に限る。
補助金額 従業員数5人以下:100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円
補助率

2/3

③デジタル枠

概要 DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発又はデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額 従業員数 5人以下 :100万円~750万円
6人~10人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円
補助率

2/3

④グリーン枠

概要 温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援 
補助金額 (エントリー類型)
従業員数5人以下:100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上: 100万円~1,250万円
(スタンダード類型)
従業員数 5人以下:750万円~1,000万円
6人~20人:1,000万円~1,500万円
21人以上:1,250万円~2,000万円
(アドバンス類型)
従業員数5人以下:1,000万円~2,000万円
6人~20人:1,500万円~3,000万円
21人以上:2,000万円~4,000万円
補助率

2/3

⑤グローバル市場開拓枠

概要 海外事業の拡大・強化等を目的とした「製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援(①海外直接投資類型、②海外市場開拓(JAPAN ブランド)類型、③インバウンド市場開拓類型、④海外事業者との共同事業類型のいずれかに合致するもの)
補助金額 100万円~3,000万円
補助率

1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3

参照:ものづくり補助金公募要領

活用事例

建設業における、ものづくり補助金の活用事例(第12回公募・採択分)のうち、東北地方と中部地方の一般型公募分から1件ずつ取りあげます。

なお、第12回公募(令和4年12月16日採択公表)では、一般型が3,200件の応募に対して1,885件の採択(採択率 約58.90%)、グローバル展開型が56件に対して22件の採択(採択率 39.30%)となっています。

事例1

地域 秋田県
事業者名 蒼真建設株式会社
事業計画名 木造解体工事の工程プロセス改善と鉄骨解体事業への進出

事例2

地域 愛知県
事業者名 金山化成株式会社
事業計画名 穴開け加工の自動化による発泡樹脂用金型の製造プロセス革新事業
認定支援機関名 西尾信用金庫

参照:ものづくり補助金第12次締切採択案件一覧(一般型)

IT導入補助金 

IT導入補助金は、中小企業等がソフトウェアやクラウドサービスの導入等に利用できる補助金です。

そのため、見積もりや原価管理における効率化ツールや、3D建築CADシステムといった各種ITツールを導入する際に役立ちます。

ITツール導入により経営課題を解決することで、労働生産性の向上を促すことを目的としています。

事業概要

本事業は4つの申請類型で構成されています。各類型の概要、補助上限額・下限額金額、補助率は以下のとおりです。

①通常枠(A・B類型)

概要 中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
補助上限額・下限額 A類型:30万円~150万円未満
B類型:150万円~450万円以下
補助率

1/2以内

②-1. デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

概要 中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
補助上限額・下限額

5万円※~350万円
※第19次締切回(最終回)に限り「下限額なし」とする。

補助率

3/4以内または2/3以内

②-2. デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)ハードウェア購入費用

PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器
補助上限額 10万円
補助率

1/2以内

レジ・券売機等
補助上限額

20万円

補助率

1/2以内

③セキュリティ対策推進枠

概要

中小企業・小規模事業者等がサイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約や価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや生産性向上を阻害するリスクを低減していただく事を目的としています。

補助上限額・下限額 5万~100万円
補助率

1/2以内

このほか、「デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)」がありますが、複数社連携しての申請が必須となるため、本記事では説明を割愛します。

参照:IT導入補助金2022

活用事例

公表されているIT導入補助金2020通常枠のうち、2件取りあげます。なお、過去の採択結果は次のとおりです。

・通常枠 7次締切分:申請数 1,954者 採択数 1,364者 採択率 69.80%

・セキュリティ対策推進枠 3次締切分:申請数 57者 採択数 55者 採択率 96.50%

・デジタル化基盤導入枠 15次締切分:申請数:2,252者、採択数:1,886者 採択率:83.75%

・複数社連携IT導入類型 3次締切分:申請数:3者、採択数:2者 採択率:66.67%

事例1

地域 青森県
事業者名 小幡建設工業株式会社
事業概要
「中小企業デジタル化応援隊事業」も活用し、Web 会議システム( Zoom )を導入。

事例2

地域 宮城県
事業者名 蒼真建設株式会社
事業概要 納品書や請求書の発行、受注・売上・入金、発注・仕入・支払、在庫管理と、販売・購買にかかわる業務全般を管理する拡張性の高い販売管理システムの導入

小規模事業者持続化補助金 

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等(個人事業主を含む)の販路開拓等を支援することにより、生産性の向上と持続的発展を図ることを目的とした制度です。

事業概要

機械装置費用などのほか、ウェブサイト関連費用や展示会の出店費、店舗改装などの外注費など、販路開拓に関するさまざまな費用が対象となります。

本事業を構成する5つの申請類型の補助上限や補助率は、次のとおりです。

なお、インボイス特例対象事業者には、記載している金額に 50 万円の上乗せが行われます。

①通常枠

補助上限 50万円
補助率

2/3

②賃金引上げ枠

概要 最低賃金の引き上げが行われた中、それに加えて更なる賃上げを行い、従業員に成長の果実を分配する意欲的な小規模事業者に対し政策支援をするため、補助事業実施期間に事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とした事業者に対し
て、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3(赤字事業者については3/4

③卒業枠

概要 更なる事業規模拡大に意欲的な小規模事業者に対し政策支援をするため、補助事業実施期間中に常時使用する従業員を増やし、小規模事業者として定義する従業員の枠を超え事業規模を拡大する事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3

④後継者支援枠

概要 将来的に事業承継を行う予定があり、新たな取組を行う後継者候補として、「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者を対象に政策支援をするため、要件を満たす事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3

⑤創業枠

概要 創業した事業者を重点的に政策支援するため、産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を公募締切時から起算して過去3か年の間に受け、かつ、過去3か年の間に開業した事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
補助上限 200万円
補助率

2/3

参照:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金

活用事例

建設業における、小規模事業者持続化補助金の活用事例(第9回公募・採択分)のうち、関東地方から2件取りあげます。

なお、第9回公募(令和4年11月25日採択公表)では、11,476件の応募者の応募に対して7,344件が採択(採択率約63.99%)され、第8回公募と比較すると採択率はやや上昇しています。

事例1

地域 山梨県
事業者名 有限会社分部組土木
事業計画名 小規模民間工事に対応した建設機械導入とウエブによる販路拡大

事例2

地域 東京都
事業者名 三輪建築設計事務所
事業計画名 自社のシンボルとなる発信力のあるショールーム作りで販路拡大

参照:小規模事業者持続化補助金:第9回締切分採択者一覧

事業承継・引継ぎ補助金 

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業等や、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する制度です。

具体的には、費用負担の軽減して承継後の積極的な投資を促進するため、中小企業等の事業承継や経営資源引継ぎに要する費用の一部を補助するものです。

事業概要 

本補助金は、経営革新、専門家活用、廃業・再チャレンジの3事業再構築補助金で構成されています。

さらに、経営革新には創業支援型、経営者交代型、M&A型の3類型が、また専門家活用には買い手支援型と売り手支援型の2類型が設定されています。補助率と補助上限額は、次のとおりです。

①経営革新事業

類型 補助率 補助下限額 補助上限額
  上乗せ額
(廃業費)
創業支援型
(Ⅰ型)
補助対象経費の
2/3以内
100万円 600万円
以内
+150万円
以内
経営者交代型
(Ⅱ型)
M&A 型
(Ⅲ型)

②専門家活用事業

類型 補助率 補助下限額 補助上限額
  上乗せ額
(廃業費)
買い手
支援型
(Ⅰ型)
補助対象経費の
2/3以内
100万円 600万円
以内
+150万円
以内
売り手
支援型
(Ⅱ型)

③廃業・チャレンジ事業

類型 補助率 補助下限額 補助上限額
廃業・再チャレンジ 補助対象経費の2/3以内 50万円 +150万円
以内

参照:令和3年度補正予算事業承継・引継ぎ補助金

活用事例

事業承継・引継ぎ補助金 3次公募(公募締切:2022年11月24日)の採択結果は、次のとおりです。

  • 経営革新事業:申請189件、採択107件(採択率 約56.6%
  • 専門家活用事業:同408件234件(採択率 57.4%
  • 廃業再チャレンジ事業:2件の単独申請と27件の併用申請、採択13件(採択率 44.8%

建設業における、事業承継・引継ぎ補助金の活用事例(3次公募・採択分)について、経営革新事業のうち経営者交代型とM&A型から2件取りあげます。

事例1

申請類型 経営革新事業 経営者交代型
地域 福岡県
事業者名 田中建設株式会社
経営革新に関する取り組みの概要

公共事業が主体で逸注などにより安定した経営ができていない。また、熟練技術者の人手に
頼った測量・施⼯・検査・出来形管理・検査を⾏っており⽣産性が低く、⺠間市場の顧客開拓
に向けた作業時間が捻出できてない。そこで、ICT⼟⽊施⼯を導⼊し⾼精度・短納期・低コ
ストの⼯事と捻出した時間で新分野展開に取組む。

認定支援機関名 ながお中小企業診断士事務所

事業再構築補助金

事例2

申請類型 経営革新事業 M&A型
地域 大阪府
事業者名 株式会社アヅミエンジニア

経営革新に関する
取り組みの概要

被承継会社は建設機械器具レンタル業である。専門性を持つ地域の小規模建設事業者が必
要としていても自身では対応できない、事務所・倉庫・事務員等の機能や受発注等の課題解決を⾏い、地域の総合建設業グループを構築する。

認定支援機関名 税理⼠法⼈T-GAIA

参照:事業承継引継ぎ補助(三次公募):経営革新(経営者交代型)交付決定一覧
参照:事業承継引継ぎ補助(三次公募):経営革新(M&A型)交付決定一覧

まとめ

建設業におすすめの補助金5選と活用事例について解説しました。自社に最適な補助金を活用し、ぜひ事業の拡大につなげてください。

慶応義塾大学経済学部卒/公認会計士 大手監査法人 リスクアドバイザリー事業(M&A支援:財務調査、財務モデル作成支援、株式評価、無形資産評価、補助金申請支援・事務局支援)に従事

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