【閣議決定】令和5年度予算案の概要とは?中小企業支援策もあわせて解説

公開日 2023/01/04更新日 2023/01/04

著者 佐藤淳 / 公認会計士

2022年12月23日に令和5年度予算案が閣議決定されました。詳細が決まり次第、順次、各事業内容の公表となります。

現在は閣議決定の内容を受けて、関連資料が公表されています。

そこでこの記事では、令和5年度予算案の概要とあわせて、中小企業支援策を重点的に解説します。

令和5年度予算案の概要

令和5年度の予算編成では、国内外の厳しい環境変化を踏まえ、持続的に発展する経済社会の実現に向けた施策を掲げています。

令和5年度概算要求額は、以下のとおりです。
全体:13.914兆円

<内訳>
・一般会計:4,186億円
・エネルギー対策特別会計:8,273億円
・特許特別会計:1,455億円

また経済産業省がとりまとめた重点施策は、次の3点です。

① コロナ禍・ウクライナ情勢による資源・物資の供給制約及び物価上昇など現下の経済状況に対する適確な対応

② 持続的な成長を可能とする経済社会の実現

③ 廃炉・汚染水・処理水対策/福島の復興を着実に進める

参照:経済産業省(令和5年度経済産業省関連予算案等の概要)
参考:経済産業省(令和5年度経済産業省関係概算要求のポイント)

令和5年度予算 中小企業・小規模事業者向け関連施策 

中小企業対策の基本的な方向性としては、厳しい経営環境に置かれている中小・小規模事業者に対する資金繰り支援や、価格転嫁対策に注力することが明記されています。

その一方、成長と分配の好循環を実現するために必要となる、成長志向を有する中小・小規模事業者の創出に向けて、新たな挑戦や自己変革を後押しするための予算措置を講じていくことも示されています。

中小企業対策費の予算規模は、令和5年度の要求ベースで1,343億円となっています。(令和4年度:1,095億円)

参照:経済産業省(令和5年度中小企業・小規模事業者・地域経済関係概算要求等ポイント)

次に、項目別に詳しく解説します。

1. コロナ長期化・原材料価格高騰等の危機への対応 

引き続き厳しい経営環境に直面している中小・小規模事業者の事業継続を支援するため、資金繰り支援を実施します。

また、転嫁円滑化施策パッケージの着実な実施によって価格転嫁や取引適正化を実現し、持続的な賃上げ原資となるよう、当該事業者の収益確保を図ります。

資金繰り支援

日本政策金融公庫補給金:151.1億円(令和4年度:145.5億円)
日本政策金融公庫が行う融資の金利を引き下げるため、利子補給を実施するものです。
中小企業信用補完制度関連補助・出資事業:67.7億円(令和4年度:49.8億円)
信用保証制度を通じた資金繰り支援を実施するもので、スタートアップ創出のために経営者保証なしのメニューを新設します。

価格転嫁対策

中小企業取引対策事業:27.9億円(令和4年度:21.3億円)
「価格交渉促進月間」(9月・3月)の実施や、下請振興法に基づく指導・助言、下請Gメンによるヒアリング、パートナーシップ構築宣言の参加企業数の増加・実効性の向上を図り、価格交渉促進月間や、下請Gメンによる取引実態の把握、下請法の厳正な執行、下請かけこみ寺での相談対応等を実施します。

2. 創業・事業承継を通じた挑戦・自己変革の推進

創業・事業承継・引継ぎ(M&A)という転換点を契機に、新たな取組に挑戦する自己変革への意欲が高い企業への支援を強化します。

具体的には、以下の取り組みを実施し、創業・事業承継を円滑に実施するための環境を整備します。

・創業時の借入時における経営者保証を不要とする保証制度創設

・中小企業・小規模事業者の後継者同士のネットワークの創出

・事業承継に係る手厚いサポート体制の構築

具体的な支援施策および予算額は次のとおりです。

後継者支援ネットワーク事業:4.0億円(新規)
後継者同士の切磋琢磨できる場を創出し、家業を活かした新規事業アイデアを競うイベントを開催します。
中小企業活性化・事業承継総合支援事業:225.0億円(令和4年度:157.7億円)
中小企業活性化協議会による事業再生支援、事業承継・引継ぎ支援センターによる円滑な事業承継・引継ぎ支援等を実施します。
事業承継・引継ぎ支援事業:20.0億円(令和4年度:16.3億円)
事業承継・引継ぎ(M&A) 後の経営革新やM&A時の専門家活用、事業承継・M&Aに伴う廃業に係る費用等を支援します。
中小企業信用補完制度関連補助・出資事業(再掲)

3. 成長分野等への挑戦に向けた投資の促進

生産性向上・再構築等に向けた設備投資を積極的に行う中小・小規模事業者等を後押しするとともに、海外展開等の新たな市場獲得についても支援します。

個別の支援施策および予算額は次のとおりです。

デジタル化・生産性向上

中小企業生産性革命推進事業(令和3年度補正:2,000.6億円)
設備投資、IT導入、販路開拓などへの補助を通じ、中小・小規模事業者の生産性向上等に向けた取り組みを支援します。
地域未来DX投資促進事業:34.9億円(令和4年度:15.9億円)
地域企業のDX実現に向け、産学官金が参画する支援コミュニティの支援活動や新事業の創出に向けた実証事業等を支援します。

海外展開・新分野開拓・事業再構築

ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業:10.6億円(令和4年度:10.2億円)
複数の中小企業が連携して行う、新たな付加価値創造を図る製品・サービスの開発や事業再構築等の取り組みを支援します。
事業再構築補助金(令和3年度補正+令和4年度予備費:7,123.0億円)
新型コロナの影響を大きく受けながらも新分野展開、業態転換等の事業再構築に挑戦する中小企業を支援します。
グリーントランスフォーメーション対応支援事業(中小機構交付金の内数)
中小機構への相談窓口の設置や支援機関の人材育成により、カーボンニュートラルに向けた取り組みを支援します。
JAPANブランド育成支援等事業:8.6億円(令和4年度:5.5億円)
海外市場の獲得を目指す中小・小規模事業者による新商品・サービス開発やブランディング、展示会出展等を支援し、企業の設備投資を促進する税制の延長などにも取り組みます。

設備投資 

中小企業経営強化税制の見直し・延長
経営力向上計画に基づく設備投資に対する即時償却または税額控除措置の見直し・延長を行います。
中小企業投資促進税制の延長
生産性向上に向けた一定の機械装置の取得に対する特別償却または税額控除措置の延長を実施します。
地域未来投資促進税制の延長・拡充
地域経済を牽引する企業の、設備投資に対する税制措置(特別償却20~50%または税額控除2~5%)を延長・拡充します。

研究開発

成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業):132.9億円(令和4年度:104.9億円)
大学などと連携して行う研究開発や、AI/IoTといった先端技術を用いた革新的なサービスモデル開発を支援します。
中小企業技術基盤強化税制の見直し
中小企業が実施する、研究開発に要する費用に対する税額控除制度の見直しを行います。

4. 地域課題解決に向けた取組への支援の拡充 

地域活性化に向けて、地方自治体等と連携し、地域課題の解決に取り組む中小・小規模事業者を支援します。

地方公共団体による小規模事業者支援推進事業:12.9億円(令和4年度:10.9億円)
地方公共団体と連携し、地域の実情を踏まえた小規模事業者による販路開拓・生産性向上に向けた取組を支援します。
地域の持続的発展のための中小商業者等の機能活性化事業:8.8億円(令和4年度:4.6億円)
地方公共団体と連携し、中小商業者等によるテナントミックスの実現に向けた施設整備やまちづくり人材の育成等を支援します。
地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業:8.4億円(令和4年度:6.5億円)
地域内外の関係主体と連携し、地域課題解決と収益性との両立を目指す取組や、地域一体で人材育成を行う取組等を支援します。
工業用水道事業費補助金:34.8億円(令和4年度:20.3億円)
地域の産業インフラとして重要な工業用水について、事業者が実施する工業用水道施設の強靱化を支援します。

5. 伴走支援・人材確保支援等

経営力再構築伴走型支援モデルを活用し、中小・小規模事業者に対する強力な経営支援を行うとともに、企業における人材育成やマッチングをサポートします。

人材育成・マッチング

中小企業・小規模事業者人材対策事業 :8.9億円(令和4年度:8.4億円)
経営課題解決に資する人材確保のため、企業の戦略策定やコンソーシアムによる人材確保支援体制の整備を支援します。

伴走支援

中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業:54.0億円(令和4年度:40.0億円)
各都道府県によろず支援拠点を整備するなど、中小・小規模事業者が抱えるさまざまな経営課題に対応するための体制を整備します。
小規模事業対策推進等事業:54.8億円(令和4年度:53. 3億円)
中小企業支援機関などを通じて行われる小規模事業者への巡回指導・窓口相談などを支援します。

まとめ

令和5年度予算案(閣議決定)に基づく、経済産業省の主要施策のうち、主に中小企業対策について解説しました。

現下の経済状況への対応と持続的な成長を可能とする経済社会の実現へ向けた取り組みによって、多くの事業者が力強いV字回復を達成することを期待したいものです。

中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事

関連コラム

コラムをもっと見る