インターネットの普及やSNSの利用拡大、またコロナ禍における外出の自粛といったさまざまな社会的背景により、身近な買い物や商品購入などの際にECサイト(通販やネットショップなど)の活用が一般化しています。
この記事では、こうした状況下でECサイトを構築する際に活用できる補助金について詳しく解説します。
補助対象となるECサイト構築とは
ECサイトの利用拡大に伴い、事業としてECサイトを新たに構築しようと試みる事業者に対して、国や地方自治体からの補助金を活用できる機会が増えています。
その背景としては、中小企業や小規模事業者による非対面型のサービスへの移行や、IT導入による業務効率化など、企業の活性化に向けた新たな取り組みを国・政府や地方自治体が積極的に支援していることが挙げられます。
また、ECサイトの構築に補助金が支給される主な理由としては、冒頭に述べたITインフラの定着に伴う社会・経済情勢の変化に対応し、こうした取り組みを図る多くの事業者における「新たなビジネスチャンス」として支援することが挙げられます。
ECサイトを構築する際に必要となる費用の負担を軽減しつつ、ECサイト制作によって販売促進を図る際にでき出来る、3つの補助金について解説します。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編など思い切った事業再構築にあたり、中小企業の挑戦を支援する、経済産業省主管の補助金です。
予算総額は令和2年度第3次補正予算で1兆1,485億円、令和3年度補正予算で6,123億円、令和4年度予備費予算で1,000億円もの金額が確保されており、コロナ禍における経済復興の目玉ともいえる計画です。
主な支援の種類としては、通常枠、大規模賃金引上枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠、グリーン成長枠、緊急対策枠があります。
なお、令和4年度補正予算より、上記類型から再編が行われる予定です。
参照:経済産業省
対象経費
事業再構築補助金での対象経費は次のとおりです。
- 建物費
- 機械装置・システム構築費(リース料を含む)
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
- 広告宣伝・販売促進費
- 研修費
対象者
主な補助対象企業は次のとおりです。
- 売り上げが減っている:2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3ケ月の合計売上高が、コロナ以前の同3ケ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
- 事業再構築に取り組んでいる:事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換を行うこと
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する:補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること
補助上限額・補助率
補助上限額と補助率は、カテゴリごとに細かく設定されています。
補助上限額
【通常枠】中小・中堅企業とも
- 従業員数20人以下:100万円~2,000万円
- 同21~50人:100万円~4,000万円
- 51~100人:100万円~6,000万円
- 101人以上:100万円~8,000万円
【大規模賃金引上枠】中小・中堅企業とも
- 従業員数101人以上:8,000万円超~1億円
【回復・再生応援枠】【最低賃金枠】:中小・中堅企業とも
- 従業員数5人以下:100万円~500万円
- 6~20人:100万円~1,000万円
- 21人以上:100万円~1,500万円
【グリーン成長枠】
- 中小企業:100万円~1億円
- 中堅企業:100万円~1.5億円
【緊急対策枠】中小・中堅企業とも
- 従業員数5人以下:100万円~1,000万円
- 6~20人:100万円~2,000万円
- 1~50人:100万円~3,000万円
- 51人以上:100万円~4,000万円
補助率
【通常枠】 【大規模賃金引上枠】
- 中小企業:2/3(6,000万円を超える部分は1/2)
- 中堅企業:1/2 (4,000万円を超える部分は1/3)
【回復・再生応援枠】【最低賃金枠】
- 中小企業:3/4
- 中堅企業:2/3
【グリーン成長枠】
- 中小企業:1/2
- 中堅企業:1/3
【緊急対策枠】(*) 補足条件あり
- 中小企業:3/4
- 中堅企業:2/3
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や個人事業主がITツール(主にソフトウェア)を導入する際に活用できる補助金です。
会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに特化した「デジタル化基盤導入枠」では、PCやタブレットなどの購入費用も補助対象となります。
IT導入補助金がECサイト構築に大きく役立つ理由として、次の項目が挙げられます。
- ECサイトの構築実績が豊富
- 補助額が最大350万円あるため、ECサイトの構築が十分に可能
- 採択率が高い
なお、令和4年度第2次補正予算分以降、一部内容が拡充される予定です。
参照:IT導入補助金2022
対象経費
IT導入補助金の対象となる経費は次のとおりです。
- ソフトウェア費
- クラウド利用料(1年分)
- 導入関連費
対象者
IT導入補助金の対象者は以下に挙げるとおりです。
中小企業・小規模事業者等(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)
なお、それぞれの業種において資本金額と従業員数に細かく上限が設定されています。
業種 | 資本金 | 従業員(常勤) |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
医療法人、社会福祉法人、学校法人 | 該当無し | 300人 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | 該当無し | 100人 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 該当無し | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業、製造業その他 | 該当無し | 20人以下 |
その他、中小企業団体や組合・連合会、財団法人、社団法人、特定非営利活動法人については、主たる業種に記載の従業員規模となります。
補助上限額・補助率
補助上限額と補助率は次のとおりです。
補助額
通常枠 | (A類型)30万~150万円未満、(B類型)150万~450万円以下 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万~100万円 |
デジタル化基盤導入類型 | (ソフトウェア)5万円~350万円、(ハードウェア)10万円もしくは20万円 |
補助率
通常枠 | A・B類型とも1/2以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 1/2以内 |
デジタル化基盤導入類型 | (ソフトウェア)50万円以下部分は3/4以内、それ以上は2/3以内、(ハードウェア)1/2以内 |
上記以外にも、複数社連携IT導入類型があります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、「小規模事業者」が販路開拓や生産性向上のための取り組みを行うために要する経費の一部を支援する制度です。
この制度は、商工会や商工会議所のサポートを受けながら、経営計画書や補助事業計画書などを作成し、審査を経た後、採択が決定されれば、所定の補助金の支給を受けることができます。
小規模事業者にはフリーランスや個人事業主も含まれ、商工会や商工会議所の会員でなくても応募が可能です。以下のような一定の取り組みを行った小規模事業者は、本制度を活用することにより補助金が支給されます。なお、令和4年度第2次補正予算分以降、一部内容の拡充が行われています。
- 人と接触する機会を減らすための機器の導入
- 新たなビジネスやサービスを始める際のチラシ・DMの作成・送付
- 新商品をオンラインの展示会等に出展
- Webサイトによる受注システムの構築 など
対象経費
補助対象となる具体的な経費としては13種類が挙げられています。
- 機械装置等費
- 広報費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 専門家謝金
- 専門家旅費
- 設備処分費
- 委託費
- 外注費
対象者
この補助金の対象者は、下記に該当する、開業届けを提出している小規模事業者となります。
- 【卸売・小売業・サービス業(宿泊業・娯楽業以外)】
常時雇用する従業員数が5人以下の事業者 - 【サービス業のうち宿泊業・娯楽業】【製造業その他】
常時雇用する従業員数が20人以下の事業者
なお、常時雇用する従業員とは、正規・非正規の区別なくフルタイム勤務を行っている労働者が該当します。
条件の詳細については事務局に個別に相談する必要があります。
補助上限額・補助率
補助上限額と補助率は次のとおりです。
- 補助上限額:250万円
- 補助率:2/3
まとめ
ECサイト構築に活用できる3つの補助金と、その条件などについて詳しく解説しました。
今や、様々な商品の取引や一般市民の消費行動において、ECサイトの活用は必要不可欠となっています。
政府や自治体が支援する補助金制度を活用し、ECサイト関連の事業を志す事業者は是非、この記事を参考としていただきたいものです。