中小企業や個人事業主が事業を営む際、設備投資を行うことは非常に重要な要素です。新たな機材やシステムなどの導入によって、生産性の向上や事業規模の拡大が期待できるためです。
設備投資を行うには当然ながら費用が伴うため、負担が気になるところですが、こうした費用は、国が支援する各種の補助金などを活用することで、大きく軽減することが可能となります。
この記事では、設備投資に役立つ補助金について詳しく解説します。
補助金対象となる「設備投資」とは
設備投資とは、企業が自社の事業を継続・発展させるために、多様な資産の調達に向けて資金を投入することを指します。具体的には、生産設備を新しく購入したり、古くなったソフトウェアを買い替えたりすることなどが挙げられます。
そして、設備投資における「設備」は、有形固定資産と無形固定資産に分類されます。
それぞれの主な項目は次のとおりです。
- 有形固定資産:土地・建物・機械・備品・車両など
- 無形固定資産:ソフトウェア、意匠権、商標権、特許など
参照:経済産業省(2022年版ものづくり白書)第5章・設備投資
自社の事業を継続・拡大するために何かを購入する行為は、ほぼすべてが設備投資となります。
設備投資を行うメリット
設備投資を行うメリットについて解説します。メリットとは、中小企業が設備投資をする目的でもあります。
生産性向上
中小企業が新たに高性能の新規設備を調達すれば、生産性の向上を図ることが可能となります。高性能設備の導入により、従来と同程度の労力で、より一層多量の商品を製造出来るようになり、より少ない人数で業務を遂行できます。
生産性が向上すれば、時間単位あたりの生産高が上がり、人件費も削減できるので、結果として利益の増大が見込まれます。
また、人員削減や人手不足といった状況下で、限られた人数で業務う必要がある場合でも、設備投資を実施して生産性を上げることは非常に有意義です。
事業拡大
事業が軌道に乗り、想定を超える市場のニーズを背景に受注が伸びて、現状の設備では生産が追いつかない場合にも設備投資は有効となります。
製品の増産に向けて新たな機材を導入したり、生産拠点を拡大したりすることにより、事業規模の拡大が期待されます。
市場のニーズを正確に把握し、設備投資を拡大して生産量を増大する好循環が進みます。
維持費の削減
古い機械やシステムを長年にわたって使い続けていると、設備の老朽化による故障やシステム障害などが原因で事業が止まってしまうリスクが高まります。
古い設備は、新しい設備と比較すれば性能が悪く、修理や点検にかかる費用やランニングコストといった維持費が割高になるケースも多いです。
このような生産性の低い状況が続けば経営を圧迫しますが、新たに設備投資を実施して各種機材やシステムを更新することで、維持費を削減できるメリットもあります。
設備投資を行うデメリット
一方、設備投資を行うデメリットとしては、端的に言えば費用がかかる点が挙げられます。
費用がかかる
設備投資によって、当然ながら相応の費用を投入することとなるので、少なからず経営に影響を与えるリスクがあります。
当該設備調達の手段が借り入れだった場合には財務内容を悪化させますし、エクイティファイナンスを実施した場合には、株数を増加させ、1株当たりの利益を薄めるという点などが挙げられます。
このため、自社の財務状況をよく分析し、妥当な範囲で設備投資を行うことが大切です。
設備投資に役立つ補助金
中小企業や個人事業主が設備投資を行う際に役立つ補助金があります。
新規設備の導入に必要となる費用負担をできるだけ少なくしたい場合には非常に役立つ支援制度です。
以下に、主な補助金について解説します。
ものづくり補助金
ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業や小規模事業者が今後、複数年にわたって相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入)などに対応するため、中小企業や小規模事業者が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援するものです。
補助率は2/3で、補助上限は4,000万円となっています。なお、14次締切分以降、類型の再編、補助上限額の上乗せ等行われています。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、中小企業や個人事業主などの販路開拓、生産性の向上、持続的発展を支援する制度です。
この補助金も、機械装置費用などのほか、ウェブサイト関連費用や旅費、資料購入費など、設備投資に関する様々な費用が対象となります。
小規模事業者持続化補助金の補助上限や補助率は概ね次のとおりです。なお、令和4年度第2次補正予算分以降、一部内容の拡充が行われています。
補助額 | 上限50~250万円 |
補助率 | 2/3(賃金引上げのうち、赤字事業者は3/4) |
補助対象経費 | 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託・外注費 |
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や個人事業主がITツール(主にソフトウェア)を導入する際に活用できる補助金です。
会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに特化した「デジタル化基盤導入枠」では、PCやタブレットなどの購入費用も補助対象となります。
IT導入補助金の補助額や補助率などは以下の通りです。
補助額 | 補助率 | |
通常枠 | A類型:30万~150万円未満、B類型:150万~450万円以下 | A・B類型とも 1/2以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万~100万円 | 1/2以内 |
デジタル化基盤導入類型 | ソフトウェア:5万円~350万円、ハードウェア:10万円もしくは20万円 | ソフトウェア:50万円以下の部分は3/4以内、それ以上は2/3以内 ハードウェア:1/2以内 |
上記以外にも、複数社連携IT導入類型があります。
条件等の詳細は下記をご参照ください。なお、令和4年度第2次補正予算分以降、一部内容が拡充される予定です。
参照:IT導入補助金2022
まとめ
設備投資の意義とメリット・デメリット、設備投資に役立つ補助金について解説しました。
みてきたように、設備投資を実施することで、中小企業は生産性の向上や事業規模の拡大といったメリットが得られます。また、機械やシステムを一新することで、設備の老朽化が引き起こすトラブルを予防できる点もポイントです。
この記事を読んで、役に立つ補助金を活用し、事業の維持・拡大に役立てていただきたいものです。