ものづくり補助金の申請サポートを行う「認定支援機関」とは?

公開日 2022/12/18更新日 2023/01/12

著者 佐藤淳 / 公認会計士

収束の気配を見せないコロナ禍や、ウクライナ情勢による原油価格の高騰、また円安による物価高など、中小企業を取り巻く経営環境は引き続き厳しい状況です。

こうした状況下、中小企業が積極的に設備投資を行えることを目的に策定されているのがものづくり補助金です。

この記事では、ものづくり補助金の概要と、申請サポートを行う認定支援機関について詳しく解説します。

ものづくり補助金の概要

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業や小規模事業者が今後、複数年にわたって相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入)などに対応するため、中小企業や小規模事業者が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行う際の設備投資を支援するものです。

補助率は最大2/3で、補助上限は4,000万円となっています。

詳細は下記サイトをご参照ください。なお、14次締切分以降、類型の再編、補助上限額の上乗せ等行われています。

参照:ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金採択のポイント

ものづくり補助金に応募して採択される際のポイントとして、どのような審査項目があるのかを分析し、理解しておくことが重要となります。審査項目をしっかりと把握していれば、申請時に事業内容を適切にアピールすることが可能です。

また、審査にあたっては通常の審査項目の他に加点項目もあるので、それぞれ把握しておくと効果的です。

審査項目は次のとおりです。

  • 技術面:事業の革新性(一般的ではないもの)として、自社の課題を明確化し、課題解決のために設備投資が貢献していることを伝えます。
  • 事業化面:事業計画の妥当性と、市場が抱えている課題への効果を示します。
  • 政策面:国の政策と一致していることが大切で、政策の方針に沿った事業計画は優遇されやすいです。

加点項目は次のとおりです。

  • 政策加点:創業または第二創業から5年以内の事業者が加点対象となります。
  • 賃上げ加点:支給要件(*)を上回る賃上げの計画を作成すれば加点されます。

(*)支給要件
・補助事業終了後3~5年で給与支給総額を年平均1.5%以上増やすこと
・事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円増やすこと

  • 成長性加点:経営革新計画(中小企業が経営計画を作成し、都道府県知事等の承認を得る制度)の承認を取得していること
  • 災害等加点:事業継続力強化計画(BCPで自然災害等による事業活動への影響を軽減し、事業継続または早期の事業回復を目指した取り組みについて記載したもの)の認定を取得していること

認定支援機関とは?

ものづくり補助金における認定支援機関とは、弁護士や税理士などの士業や、銀行や信用金庫などの金融機関、商工会や民間コンサルタントなど、「一定レベル以上の専門性を持っている」と国が認定した支援機関です。

この認定支援機関は、中小企業者の事業計画策定をサポートする立場として、平成11年7月に認定支援革新の開始に伴って制度化されました。

なお、現在のものづくり補助金では、認定支援機関確認書は必要ありません。認定支援機関確認書は、認定支援機関からの支援を受けたことを証明するものですが、現在は認定支援機関のサポートを受けることは必須ではないため、これに伴い認定支援機関確認書も不要となりました。

一方、認定支援機関に依頼することで、採択率をさらに上げることができるのも事実です。

外部支援を受けた事業者と受けていない事業者の採択率(6次~9次)をみると、支援を全く受けていない場合の採択率が42.2%であるのに対し、支援を受けた場合は、報酬額によってさまざまですが、報酬がない場合で49.9%、報酬額が15%以上の場合は60.1%と、その支援効果が明らかになっています。

【ものづくり補助金】認定支援機関に依頼できること

ものづくり補助金を申請し、採択されるためには認定支援機関を活用するのが効果的なことは上述のとおりですが、実際に当該支援機関に依頼できる主な項目について解説します。

事業計画の作成サポート

最も重要なのが、事業計画書の作成サポートです。サポートにあたっての主な項目は次のとおりです。

  • 依頼元企業からのヒアリングに基づいて発見した、企業が持つ課題に対する解決策の提案
  • 目標設定や計測方法に関する具体的な提案
  • 重要な評価項目である、マーケット動向や市場規模、具体的な想定ユーザーに関する調査
  • 新規顧客獲得方法に関する提案
  • 売上高や経常利益など、経営上の数字目標に関する提案

重要となるのは、依頼元企業と認定支援機関との綿密な連携とコミュニケーションです。

採択後のサポート

ものづくり補助金では、単に申請・採択されるだけではなく、実施後の成果が求められます。何の検証もなく受給できる訳ではありません。実施後の成果が挙げられるよう、認定支援機関は、事業が採択されたあとも引き続き、依頼元の中小企業をサポートします。

このサポートは、事業計画書の作成に匹敵するほど重要なポイントといえます。

長引くコロナ禍で疲弊した中小企業の事業を再生するためには、単に資金面だけの支援だけでなく、事業に対する実行力が重要です。こうした点を踏まえ、経済産業省は、自社単独で成果を出すことが困難な中小企業へのサポート役として期待しています。

【ものづくり補助金】認定支援機関選びのポイント

認定支援機関から支援を受ける際、まずは自社が直面する経営課題と事業計画の骨格について向き合うことが大切です。自社の課題や事業の方向性ついてしっかりと整理した後に認定支援機関を選ぶことで、相談内容が具体化できます。

一方、認定支援機関は依頼元企業の事業計画策定や経営課題の分析、事業計画のモニタリングなど、様々なサポートを実施します。認定支援機関の専門性や得意分野はそれぞれ異なるため、自社の経営課題に最適な相談先を決めることがポイントです。

なお、具体的に認定支援機関を選ぶ際には、認定支援機関一覧やインターネット検索を活用します。認定支援機関は全国で3万機関以上あるので、認定支援機関を探す際には自社の希望条件を整理しておくことが重要です。

希望条件の例としては次の項目が挙げられます。

  • 報酬条件(着手金と成功報酬など)
  • 地域
  • 支援可能な業種
  • サポート内容(事業計画書の作成や、販路拡大など)
  • 認定支援機関種別(銀行、税理士など)
  • 支援実績(各補助金における支援実績や、資金調達の実績)

資金調達に問題を抱えている場合には資金調達の支援実績や支援対象地域が優先順位となり、販路拡大に課題がある場合は、販路拡大の支援実績や利用者の声が参考となります。

このように、自社が求める条件を明確にしてから情報収集をすることで、最終的には希望に沿った最適の認定支援機関が選定できます。

まとめ

ものづくり補助金の概要と採択のポイント、申請サポートを行う認定支援機関とその支援内容、支援機関の選び方について詳しく解説しました。

まだまだ厳しい経営・事業環境が続く中小企業ですが、この記事を読んで、積極的な設備投資へ向けての参考としていただきたいものです。

中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事

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