事業再構築補助金の申請代行とは?依頼するメリット・デメリットを解説

公開日 2022/12/24更新日 2022/12/24

著者 佐藤淳 / 公認会計士

長引くコロナ禍で厳しい経営環境に直面する多くの中小企業にとって政府(経済産業省)が支援する事業再構築補助金の活用は、事業が継続可能となり、非常に有意義です。

この記事では、事業再構築補助金における申請代行と、そのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金とは、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編など思い切った事業再構築にあたり、中小企業の挑戦を支援する、経済産業省主管の補助金です。

補助対象となる主な条件は次のとおりです。

  • 売り上げが減っている:2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3ケ月の合計売上高が、コロナ以前の同3ケ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
  • 事業再構築に取り組んでいる:事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換を行うこと
  • 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する:補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること

参照:経済産業省

事業再構築補助金の申請代行とは?

事業構築補助金の申請手続き自体は、申請する事業者が自分自身で行うことが鉄則です。このため、依頼できる代行作業とは、申請書の作成をはじめとした「実務上のサポート」となります。

事業再構築補助金の申請に当たっては、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)と相談しながら事業計画を作成し、申請の際も認定支援機関による確認が必要です。

認定経営革新等支援機関とは、中小企業を支援できる機関として経済産業大臣が認定した機関のことを指し、現在全国で3万以上の金融機関や支援団体、税理士、中小企業診断士などが認定を受けています。

申請代行で頼めること

事業再構築補助金の申請にあたり、申請代行が可能な事業者(以下、申請代行業者)に依頼できる主な項目について解説します。

事業計画書の作成

申請書の中心となるのが事業計画書ですが、この作成をサポートすることが可能です。
事業計画書で記載が求められる項目は以下のとおりです。

  • 補助事業の具体的取り組み内容
  • 将来の展望
  • 本事業で取得する主な資産
  • 収益計画

事業計画書は、A4サイズで15枚以内(補助金額が1,500万円以下の場合は10枚以内)にまとめる必要があります。

申請代行業者は、依頼元企業から事業計画に関するヒアリングを実施し、その内容に基づき事業計画書を作成します。
企業が自ら計画書を作成した場合は、その内容をチェックして適宜加筆修正する場合もあります。

実績報告書の作成

事業再構築補助金に応募し、無事採択された際には、事業活動に伴って実績報告書を提出する必要があります。
採択後に作成する実績報告書の作成支援も依頼可能です。

電子申請上のサポート

事業再構築補助金は、「jGrants」と呼ばれる補助金申請サイトから、事業者自身が電子申請します。その際、財務情報をレーダーチャートで表したローカルベンチマーク資料の提出も求められます。

こうした手続きを行う際、PC操作に不慣れな申請者をサポートし、入力方法などをアドバイスする場合もあります。

参照:jGrants

費用・手数料の相場

申請代行業者へ支払う報酬には、採否にかかわらず必要となる着手金と、採択された場合に支払う成功報酬の2つがあります。

一般的には、着手金が5万円~15万円程度で、成功報酬は獲得した補助金額の10%~20%程度が相場となっています。なお、着手金無料で完全成功報酬のみを謳(うた)っている事業者の場合、成功報酬の割合が高い傾向があります。

事業再構築補助金の申請代行を依頼するメリット

事業構築補助金の申請サポートを利用するメリットについて解説します。

採択率の向上

事業再構築補助金には採択審査があるので、申請すれば必ず受給できる訳ではありません。事実、公開されている過去6回の採択率はトータルで50%を切っています。その一方、申請支援を手掛ける事業者の中には、70%以上の採択実績を有するものが少なくありません。

こうした背景から、確実に補助金獲得を目指すには、事業計画作成に精通した「プロ」に依頼することで採択率の向上が期待できます。

事業再構築補助金の申請で最も重要となる事業計画書は、事業再構築指針に合致するだけでなく、市場ニーズや競合に対する優位性、費用対効果など、合計13にのぼる審査項目を網羅して記載することが求められます。

申請手続きに不慣れな事業者に代わり、専門的な見地からサポートする代行業者を活用すると効果的です。

事業計画書作成にあたっての支援

申請代行業者の多くは、経営コンサルタントなどの事業も行っています。

経営コンサルタントはマーケティングや財務などの専門分野をベースに活動しているため、事業計画書の内容をレベルアップさせるための助言を行うことも可能です。

申請する企業にとって、自社の強みなどは意外に気がつかないものです。こうした状況では、第三者である経営コンサルタントは依頼元企業の強みや特徴を客観的に把握し、申請に反映させることができます。

参照:総務省

事業再構築補助金の申請代行を依頼するデメリット

次に、申請代行を依頼するデメリットについて解説します。

費用がかかる

事業構築補助金の申請サポートを利用する際のデメリットとしては、やはり上述したように一定の費用がかかることが挙げられます。

ただし、申請が無事採択され、多額の補助金を獲得できた場合には、多少の費用は必要コストだと割り切ってしまえばメリットの方がはるかに大きいです。

なお、申請業者に支払う対価はそれぞれであり、特段の規定もないため、納得できる報酬額とスキームであるかどうかを事前にしっかり確認することが重要です。

まとめ

事業再構築補助金を申請する際に活用する「申請代行」の意味と、申請代行業者に依頼するメリット・デメリットについて解説しました。

事業再構築補助金は、コロナ禍で苦しむ多くの中小企業を支援する有効な制度として広く活用されています。

この記事を読んで、今後この制度を活用しようと考えている企業は、是非申請代行のメリットを活かして補助金獲得へと進めていただきたいものです。

中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事

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