POSレジ導入に役立つ補助金・助成金4選

公開日 2023/01/31更新日 2023/03/09

著者 細井 陽 / 公認会計士

中小企業が自社の店舗や商業施設などでPOSレジを導入する際、有効活用できる補助金や助成金があります。

こうした支援制度を活用することで、当該設備の導入を検討している事業者は、コストを抑制しながら最新のPOSレジを導入することが可能となります。

この記事では、POSレジ導入の際に活用できる補助金と助成金を4つ選んで解説します。

POSレジとは

POSレジとは、POS機能を備えたレジスターを指します。

POSは「Point of Sales」の意味で、日本語では「販売時点情報管理」と呼ばれるシステムであり、商品の会計処理だけではなく、リアルタイムでデータの収集・分析ができる特徴があります。

POSレジ導入のメリットとして、業務の効率化や、収集した売上情報に基づくデータ分析機能、そして様々な分析結果から、今後の経営改善やマーケティング戦略策定が可能となる点などが挙げられます。

また、勤怠管理システムと連動できるPOSレジでは、従業員の勤怠情報と売上を比較して人員配置の合理性や生産性を高めることも可能となります。

補助金と助成金の違い

まず、補助金と助成金の違いについて解説します。

補助金

返済不要の給付金制度で、それぞれの募集期間内に応募して採択されれば受給できます。

ただし、期間内に応募しても予算枠の関係から、審査を通らない場合も多くあります。採択率は補助金や申請枠によって異なりますが、概ね40%~50%程度と言われています。

補助金は主に経済産業省や地方自治体が主管し、財源は税金で、設備投資関連の補助金が中心となります。

助成金

助成金も補助金と同じく返済不要の給付金制度ですが、補助金と異なり、一定の条件を満たせばほぼ受給できます。このため、採択率という概念はありません。

助成金は主に厚生労働省や地方自治体が主管し、雇用保険料が財源となります。雇用関係や研究開発関連の助成金が中心となっています。

POSレジ導入に使える補助金・助成金4選 

POSレジを導入する際には、一般的に20万円~50万円程度の資金が必要とされています。

しかし、こうした費用の負担は、補助金や助成金を活用することで大きく抑えることが可能です。

この記事では、POSレジの導入に使える補助金と助成金を4つ取り上げます。

POSレジを導入する際に使える支援制度は、次のとおりです。

  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 業務改善助成金

それぞれについて解説します。

ものづくり補助金 

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者等が今後、複数年にわたって相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入)などに対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援するものです。

この補助金は、以下のように細分化されています。

  • 通常枠
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠
  • デジタル枠
  • グリーン枠
  • グローバル市場開拓枠

このうち、POSレジを導入する場合には「通常枠」「デジタル枠」への申請が考えられます。デジタル枠の主な内容は次のとおりです。

  • 概要:DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発又はデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資を支援
  • 補助金額:
    従業員数 5人以下:100万円750万円
    6人~20人100万円1,000万円
    21人以上:100万円1,250万円
  • 補助率:いずれも2/3
  • 設備投資の条件:単価50万円(税抜)以上の設備投資が必要
  • 補助対象経費:機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

参照:ものづくり補助金総合サイト

なお、下記のような採択事例も公開されているので参考としてください。

参照:ものづくり補助金・第12次採択案件一覧

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツール(主にソフトウェア)を導入する際に活用できる補助金です。

この補助金は、以下のように細分化されます。

  • 通常枠(A・B類型)
  • デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
  • デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)ハードウェア購入費用
  • デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
  • セキュリティ対策推進枠

ハードウェア購入に特化した「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)ハードウェア購入費用」では、PCやタブレットなどの購入費用が補助対象となるほか、POSレジの購入費用も対象となります。

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)ハードウェア購入費用の主な内容は次のとおりです。

  • 補助金額:10万円20万円
  • 補助率:いずれも1/2以内
  • 補助対象機器:PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器、レジ・券売機等

小規模事業者持続化補助金 

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等(個人事業主を含む)の販路開拓等を支援することにより、生産性の向上と持続的発展を図ることを目的とした制度です。

この制度は、商工会や商工会議所のサポートを受けながら経営計画書や補助事業計画書などを作成し、審査を経た後に採択されれば、補助金の受給が可能となります。

小規模事業者にはフリーランスや個人事業主も含まれ、商工会や商工会議所の会員でなくても応募が可能です。

以下のような一定の取り組みを行った小規模事業者は、本制度を活用することで補助金が支給されます。

  • 人と接触する機会を減らすための機器の導入
  • 新たなビジネスやサービスを始める際のチラシ・DMの作成・送付
  • 新商品をオンラインの展示会等に出展
  • Webサイトによる受注システムの構築 など

参照:商工会議所地区 令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金

対象経費

補助対象となる具体的な経費は、以下の11種類です。このうち、POSレジ購入は機械装置等費として対象に含まれます。

  • 機械装置等費
  • 広報費
  • ウェブサイト関連費
  • 展示会等出展費
  • 旅費
  • 開発費
  • 資料購入費
  • 雑役務費
  • 借料
  • 設備処分費
  • 委託・外注費

対象者

この補助金の対象者は、以下に該当し、かつ、開業届けを提出した小規模事業者です。

  • 【卸売・小売業・サービス業(宿泊業・娯楽業以外)】
    常時雇用する従業員数が5人以下の事業者
  • 【サービス業のうち宿泊業・娯楽業】【製造業その他】
    常時雇用する従業員数が20人以下の事業者

なお、常時雇用する従業員とは、正規・非正規の区別なくフルタイム勤務を行っている労働者が該当します。条件の詳細については公式ホームページの別紙参考資料に記載されています。

補助上限額・補助率

補助上限額と補助率は次のとおりです。

  • 補助上限額:250万円
  • 補助率:2/3(赤字事業者については3/4)

業務改善助成金

業務改善助成金は、「事業場(※)内で最も低い賃金」を一定額以上引き上げるとともに、生産性向上につながる設備投資(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)などを行った場合に、その費用の一部を助成するものです。

※事業場の適用範囲は、原則として「同じ場所にあれば一つの事業場」とみなされますが、労働状態が違う場合には別々の事業場となります。例えば、工場で生産にあたる労働者と工場内の食堂で食事を作る労働者は業態がそれぞれ全く異なるため、別々の事業場とみなされます。

本助成金の公募ページには、「POSレジシステム導入による在庫管理の短縮」が活用事例として記載されています。

助成額

事業場内での最低賃金を、30円、45円、60円、90円といったコース区分ごとに定められた金額以上引き上げた場合、生産性向上のための設備投資に要した費用の一部が助成されます。

なお、事業場内最低賃金の引き上げ額や引き上げる労働者数ごとに助成の上限額が定められています。

詳しい要件・上限額等については、下記参照ページにてご確認ください。

参照:厚生労働省 [2]業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援

まとめ

中小企業が店舗や商業施設などでPOSレジを導入する際に、活用できる補助金と助成金について解説しました。

POSレジの機能はさまざまで、旧来型の設備と比較すると数多くのメリットを有しています。

この記事を読んだ事業者の方は、この機会に是非最新のPOSレジ設備を導入し、ぜひ、今後の業務改善に活かしてください。

慶応義塾大学経済学部卒/公認会計士 大手監査法人 リスクアドバイザリー事業(M&A支援:財務調査、財務モデル作成支援、株式評価、無形資産評価、補助金申請支援・事務局支援)に従事

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